睡眠のプロが教える「睡眠に悪い習慣、良い習慣」(前半):「自測自健(じそくじけん)」のススメ:朝日新聞デジタル

「自測自健(じそくじけん)」のススメ

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睡眠のプロが教える「睡眠に悪い習慣、良い習慣」(前半)

 毎日、よく眠れていますか? 朝の目覚めが悪い、日中、眠気に襲われる……。睡眠不足と感じたら、それは体からのSOSかもしれません。
 日頃の睡眠をおろそかにすると、糖尿病や高血圧、認知症などの重大な病気につながる可能性があることが最新の研究で解明されつつあります。
 睡眠と健康の関係と、良質な睡眠の妨げとなる悪い習慣、やるべき良い習慣をスタンフォード大学医学部教授で睡眠学の専門家・西野精治先生に聞きました。

日本の睡眠時間は世界でも最低?!

 2011年の我々の調査では、日本人の平均睡眠時間は6.5時間で大都市ではさらに短く、東京都民の平日の平均睡眠時間は5.59時間でした。同じ調査でニューヨークは6.35時間、上海は7.28時間なので、各都市と比べると非常に短い。2016年のミシガン大学のインターネット調査では、日本の睡眠時間は100カ国中、最下位という結果でした。

 私もアメリカに行ったばかりの40代の頃は、長時間労働でした。夜中まで働き、睡眠は5時間くらい。62歳になった今は、働き方がフレキシブルになり、朝は6時に起きて職場へ向かい、夕方には自宅に戻り、夜は10時に寝ています。

睡眠不足の借金「睡眠負債」は完済できない

 日本人の場合、本当はもっと長く眠りたいと思っても、仕事の都合や、人との付き合いで十分な睡眠時間を確保することが難しいのが現状。この状態を「睡眠不足」という言葉で片付けがちですが、私たち研究者は「睡眠負債」と呼んでいます。気づかないうちに睡眠不足の借金がたまり、揚げ句の果てには破産しなければならない、つまり病気にかかってしまう危険な状態なんです。

 睡眠不足の解消方法として、週末は「寝だめ」をしている人も多いですね。しかし、これは睡眠負債を返済しているにすぎない。例えば理想の睡眠時間が8.2時間の人がいるとします。その人の実際の睡眠時間が平均7.5時間とすると、毎日約40分の睡眠負債を抱えていることになります。
 そして、毎日の短時間睡眠によってふくらんだ大きな借金は、すぐに完済することは難しく、寝だめは根本的な解決にはなりません。

 

睡眠負債は生活習慣病や認知症を引き起こすリスクも

 短時間の睡眠は脳や体に悪影響を及ぼします。血糖を抑制するインスリンの分泌や働きが悪くなって血糖値が高くなると糖尿病を発症したり、食べ過ぎを抑制するホルモンのレプチンが出にくくなると、肥満になったりします。交感神経が持続的に働くことで、高血圧にもつながりやすい。精神面では、うつ病、不安障害、アルコール依存症などにかかるリスクが高まります。さらに、最近では、アルツハイマー型認知症の原因物質の一つアミロイドβが脳にたまりやすいことがわかり、認知症との関連性の研究が進んでいます。

 40代以上になると、加齢による病気の発症リスクが高いので、より危険性が増すのは当然です。大切なのは、現状の負債を増やさないように今からでも良質な睡眠をとることです。

 そのためには、自分にとっての理想的な睡眠時間を知りたいところですが、詳しく調べるには専門機関にかからなければならず、現実的には難しい。「もっと眠りたい」という欲求からくる自覚症状に拠るところが大きいのです。

絶対やってはいけない!
質の悪い睡眠の元凶 四つの習慣

 十分な睡眠時間が確保できない上に、良質な睡眠を妨げる原因となる四つの習慣を紹介します。
 一つ目は、大量の飲酒です。大量のアルコールは深い睡眠を阻害し、夜間の覚醒回数を増やします。また、利尿作用があるので、途中で目が覚めてトイレに行きたくなったり、そのために脱水症状になったりして、長時間寝ても眠りが浅くなります。日本酒は1合、ビールは350ミリリットル1缶程度が適量ではないかと、私は思います。

 

 二つ目は食です。寝る前にはとんかつやラーメンなど、脂っこい食事は避けましょう。できれば就寝3時間前には済ましておくことが理想的ですね。食べてすぐ眠ると、胃の働きが活発なままの状態なので、よい睡眠を得られません。かといって空腹の状態もよくない。空腹だと覚醒反応を促すオレキシンという物質が出て、眠れなくなってしまいます。寝る前に空腹になったら、少しでも食べましょう。私は寝る前に空腹になると、消化のよいお茶漬けや、うどんなどの炭水化物をとっていますが、ダイエットなどで炭水化物の摂取が気になる方はスープやヨーグルトなどがお勧めです。

 三つ目、寝る前のスマホやゲーム。画面を見て操作することによって、脳が刺激を受けて覚醒してしまうんです。私は夜に届くメールも開けません。朝見たら別に大したこと無い内容でも、夜見ると興奮して睡眠に影響してしまうこともありますから。

 四つ目、長時間の入浴も良質の睡眠をとるためには避けたほうがいいでしょう。睡眠時は体の中の体温「深部体温」が下がることによって、熟睡できます。深部体温が下がるには時間がかかり、その間は発汗して寝付けません。例えば温泉に行って温まった後、眠れないからといってまた温泉に行くと、朝まで眠れないなんてことにもなります。

 それでは、睡眠時間が十分に確保できない多忙なビジネスパーソンにとって、良質な睡眠にするにはどんな習慣がよいのでしょうか? 後半は、快適な睡眠を取るために有効なやるべき方法を紹介します。

   

プロフィール

医師、医学博士 西野精治(にしの・せいじ)

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大睡眠生体リズム研究所所長。1987年、スタンフォード大医学部精神科睡眠研究所に留学。2005年に同大睡眠生体リズム研究所の所長に就任。過眠症「ナルコレプシー」を専門に研究を続ける。著書に「スタンフォード式最高の睡眠」(サンマーク出版)。

スタンフォード式最高の睡眠
(サンマーク出版 1620円)

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

トレンドニュースby 朝日新聞デジタル

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