睡眠のプロが教える「睡眠に悪い習慣、良い習慣」(後半):「自測自健(じそくじけん)」のススメ:朝日新聞デジタル

「自測自健(じそくじけん)」のススメ

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睡眠のプロが教える「睡眠に悪い習慣、良い習慣」(後半)

 短時間睡眠を続けると、重大な病気を引き起こしかねません。後半は、睡眠時間が確保できなくても、良質な睡眠をとる方法を紹介します。快適な睡眠で、一流のビジネスパーソンを目指しましょう!

寝付き後90分がゴールデンタイム

 良質な睡眠はどうしたらとれるのか。それは、入眠後、最初の90分がポイントです。眠りには、レム睡眠(体は眠っているが脳は起きている浅い眠り)とノンレム睡眠(体も脳も眠っている深い眠り)の2種類があります。寝付いてすぐにノンレム睡眠に入り、交互に4、5回繰り返してレム睡眠で起きるのが通常のリズムです。

 最初の90分のノンレム睡眠が睡眠全体の中でも最も深い眠りであり、細胞の増殖や正常な代謝を促す成長ホルモンが多く分泌される時間です。この90分の質をよくすることで睡眠のリズムが整い、自律神経やホルモンの働きもよくなります。まさに睡眠のゴールデンタイムなのです。

多忙なビジネスパーソンが良質な睡眠をとるには

 ゴールデンタイムの質をあげるには、まず就寝時間を固定すること。ライフスタイルを規則正しくすることで、「同じ時間に眠る」というリズムが体に刻まれ、寝付きがよくなります。しかしこれは、多忙なビジネスパーソンには難しいことだと思います。

 そこで着目すべきなのが体温。睡眠時は体の中の体温「深部体温」が下がります。日中は手足の温度「皮膚温度」より2度ほど高いですが、睡眠時はこの差が小さくなり、毛細血管の多い手足から熱を放散することで深部体温を下げます。深部体温は上がった分だけ下がろうとする性質があり、例えば入浴で0.5度上がった深部体温が元に戻るまでの時間は90分。そこからさらに下がることで熟睡できるのです。入浴は単に体を温めるだけでなく、血液の循環をよくして「熱放散」を促すためでもあるので、入浴は就寝90分前に済ますことが重要です。

 忙しいときはシャワーでもいいですが、一番いいのは足湯ですね。足の血行をよくすれば熱放散を促し、入浴と同じ効果があります。足湯は寝る直前でも構わない ので、ビジネスパーソン向けです。
 加えて、足のマッサージ器を使うのもいいですね。昼間眠くならない私も、マッサージ器を使うと眠くなるのは、血液の循環がよくなって熱放散が促進されているからでしょう。

 

スッキリ目覚めるためには覚醒スイッチを押せ!

 目覚めをスッキリさせるには、目覚まし時計を2段階に設定することをお勧めします。朝は眠りの浅いレム睡眠が増え、少しずつ体温が上昇し目覚めの準備が始まります。どのタイミングで起床するかは、それぞれのスリープサイクルがあるので検知は難しいのですが、起きなければならない20分前に一度小さな音のアラームをセットすれば、その時に眠りが浅い場合は自然に起きられます。もし最初のアラームで気が付かなければ深い眠りですのでスルーして、2度目のアラームで起床すればよいでしょう。

 そして、必ず朝の光を浴びること。曇りの日でも構いません。光は体内リズムを整え、眠りを推進させるメラトニンの分泌を抑制するので、行動へのスイッチが入ります。しかし、高血圧の人は注意が必要です。目覚めてすぐの行動は血圧が急上昇するので、ゆっくりとベッドから出ることを推奨し、起床後30分以内に太陽の光を浴びましょう。

 さらに、朝食をしっかり取ることも重要です。食はバランスのとれた栄養があるものをよくかんで食べましょう。咀嚼することで脳に「これから活動する」という信号を送ります。そして、活動するためには深部体温を上げなくてはいけないので、温かい物を食べましょう。私は20年間、白飯にみそ汁、ベーコンエッグを朝食にしています。特に温かい汁物は覚醒を助けてくれるので、ラインナップの一つに加えるといいでしょう。

短時間睡眠に潜む病気発症のリスク

 睡眠負債の多い人は、十分に睡眠をとれている人に比べて、生活習慣病などの病気にかかるリスクが1.4倍にもなります。
 特に睡眠時無呼吸症候群であれば、生活習慣病や、心筋梗塞、脳梗塞にかかるリスクは3、4倍で、重症だと約4割の人が8年以内には亡くなるという調査結果もあり、非常に危険な病気です。日本人はあごが小さく、気道が狭いため、肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群を発症する場合があります。10秒の呼吸停止が1時間に5回程度なら正常範囲内ですが、15回以上だと治療が必要です。本人は自覚がないので、家族から注意を受けないとわからないという点も危険ですね。

 

 また、睡眠は血圧にも大きく関わっています。健康な人であれば、睡眠時の血圧は下がり、目覚めると血圧が上がります。これをディッパーと呼びます。しかし、睡眠時も血圧が上がったまま下がらない状態をノンディッパーと呼び、動脈硬化や脳卒中につながると言われています。睡眠負債はノンディッパーの誘因になります。ですから、短時間の睡眠は万病の元なのです。

良質な睡眠をとって一流の仕事をしよう

 睡眠は生活の基礎。ダイエットやエクササイズも睡眠をきちんととらないと、効果は上がりません。それに、睡眠時間を削ると、仕事のパフォーマンスが落ちて失敗する確率も上がります。睡眠時間を確保することが難しければ、質をよくする。一流の仕事を目指すなら、まず良質な睡眠をとることです。

       
   

プロフィール

医師、医学博士 西野精治(にしの・せいじ)

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大睡眠生体リズム研究所所長。1987年、スタンフォード大医学部精神科睡眠研究所に留学。2005年に同大睡眠生体リズム研究所の所長に就任。過眠症「ナルコレプシー」を専門に研究を続ける。著書に「スタンフォード式最高の睡眠」(サンマーク出版)。

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自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

トレンドニュースby 朝日新聞デジタル

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