【都道府県別ランキング付き】高血圧になりやすい地域はある?:「自測自健(じそくじけん)」のススメ:朝日新聞デジタル

「自測自健(じそくじけん)」のススメ

  • TOP
  • 血圧
  • 【都道府県別ランキング付き】高血圧になりやすい地域はある?

【都道府県別ランキング付き】高血圧になりやすい地域はある?

 高血圧になりやすいかどうかは、住んでいる場所と関係があるのでしょうか?高血圧性疾患の受療率や、食塩・野菜摂取、歩数、健康寿命の都道府県別のランキングなどを参考に、高血圧予防につながる環境や習慣について東北大学大学院医学系研究科の辻一郎教授にうかがいました。

高血圧は脳血管疾患の引き金に。ランキングからわかることは?

 「人は血管から老いていく」とよく言われます。動脈硬化から始まって、脳血管疾患や心筋梗塞、腎不全につながっていくからです。動脈硬化は高血圧から引き起こされるので、元気で長生きするには、高血圧にならないこと、高血圧になった場合はきちんと治療することが大事です。

 全国高血圧性疾患受療率ランキング(表1)は、「高血圧で、かつ受診している人 」の割合なので、単純に高血圧が多い県とは言い切れないところがあります。ただ、このランキングで1位の鹿児島は、脳血管疾患の死亡率(※注1)が全国で男性が8位、女性が4位と高く、6位の秋田も、脳血管疾患の死亡率が男性1位、女性3位と高い。逆に、46位の沖縄は、脳血管疾患の死亡率が男性46位、女性47位と低いです。だから、おそらくまったく関連がないというわけではないでしょう。

 ランキングの結果は、一つの要素では順位付けはしにくく、食・運動・生活習慣など複数の要素を踏まえて判断する必要があります。ですから、ランキングを複合的に見て、よい健康習慣を学ぶことが大切です。

(表1)

食塩摂取で上位の山梨と長野を救ったのは、野菜だった!?

 高血圧の要因は、喫煙、飲酒、運動不足、肥満といろいろありますが、一番大きいのが塩分。塩分をとりすぎると、高血圧を引き起こすと言われています。

 食塩摂取量(表2)と野菜摂取量(表3)を見てみましょう。注目したいのは、塩分を多くとっていても全国高血圧性疾患受療率ランキングの低い県があることです。食塩摂取量が男女ともに1位の山梨は、全国高血圧性疾患受療率ランキングでは29位。長寿で有名な長野も、食塩摂取量は男性6位、女性8位と上位でありながら、全国高血圧性疾患受療率ランキングは32位です。一方、野菜摂取量を見ると、山梨は男性6位、女性2位、長野は男女ともに1位と高いです。野菜に含まれるカリウムはナトリウムを追い出すので、野菜を多くとることで、塩分摂取量が多いことの影響が減っているのではないかと考えられます。もちろん、その他にもさまざまな要因がありますけどね。

 
(表2)
(表3)

よく歩くのは兵庫、東京、神奈川。歩いて血圧を下げよう

 ライフスタイルでは、歩行が大事です。歩いていると血管が拡がってくるので血圧が下がります。最近の研究では、よく歩く人は認知症も少ないというデータも出ています。歩数ランキング(表4)では、兵庫、東京、神奈川が上位ですね。この都府県の人たちの健康意識が特に高いというよりは、地下鉄やバスなど公共機関が発達しているので、それを使う人が多く、移動の合間に歩く機会が多いと思われます。それに対して、下位の鳥取、新潟、青森などは、車に頼らざるを得ない環境が多く、歩く機会が少ない。そういった住む環境や町づくりも影響してくるわけです。

 私も、仙台で暮らしているときと東京へ行ったときでは、東京のほうが歩数は3千歩も多い。東京は暮らしているだけで知らず知らずに歩く環境なんですね。日常生活で歩く必要がある環境、あるいは、歩きたくなるような環境だと、歩数は自然と増えます。その結果、さまざまな病気が予防できます。

 たとえば、ロンドンの2階建てバスの運転手と車掌の間で、虚血性心疾患の発生率を比較した調査(※注2)があります。両者は学歴も収入も生活習慣も大体似ていますが、運転手は仕事の間座りっぱなし。車掌は切符を売るために階段を昇り降りしている。その人たちを5年間追跡してみたら、車掌の虚血性心疾患の発生率は運転手の約半分しかなかった。車掌は仕事で歩き回ったから、心臓発作を予防できたのだと思われます。

 高血圧性疾患ランキングを見ても、東京や神奈川、愛知、千葉は低い。都会でストレスの多いわりにランキングが低いのは、歩いている地域だからというのも要因の一つかもしれません。

長生きするにはストレスはNG。人と接して生きがいを

 血圧をコントロールする自律神経はストレスの影響を受けやすく、ストレスは動脈硬化を引き起こす要因の一つになります。そのため、健康で長生きするためにはストレスが少ないことも大事です。

 

 健康寿命ランキング(表5)で男女ともにトップの山梨には、ストレス解消につながる、ある文化が残っています。それは、「無尽」と呼ばれる互助組織の集まり。地域や職場、同級生などの仲間内でお金を積み立てて、旅行や飲み会などを行い、定期的に交流するのです。人と接してアクティブに過ごすことで、心身共に健康的でいられるのかもしれません。ほかの地域でも、たとえばボランティアなどの役割を持ち、地域社会に貢献して生きがいを持つ人は、生き生きとしていますよね。

(表4)
(表5)

静岡が誇る緑茶。カテキンが動脈硬化を防ぐ

 健康寿命ランキングで男性3位、女性2位の静岡といえば、茶の名産地。緑茶にはいろいろな健康効果があるんですよ。まず、緑茶に含まれるカテキンはポリフェノール属で、動脈硬化を防ぐ作用を持っているため、心筋梗塞や脳梗塞の予防が期待できます。私たちが宮城県北部の住民約5万人を対象に長期追跡しているデータ(※注3)によると、緑茶をたくさん飲んでいる人ほど心筋梗塞や脳梗塞の死亡率が低いという結果が出ました。

 さらに、肺炎による死亡率や認知症・要介護の発生率も低いことがわかりました。カテキンは殺菌効果もあるため、歯周病の予防にもつながりますよ。歯周病は、それ自体が脳梗塞のリスクを高めますからね。緑茶は2重3重の健康効果があるんです。それらを含めて、静岡が健康寿命の長い理由ではないかと思われます。

 人との交流や健康的な食事が、日常生活に組み込まれ、毎日自然に実行できたら理想的ですね。

       
出典
※注1)厚生労働省「平成29年度人口動態統計特殊報告 平成27年度都道府県別年齢調整死亡率の概況」 2017年
※注2)Morris JN, et al. Incidence and prediction of ischemic heart-disease in London busmen. Lancet 2(7463):553-559. 1966年
※注3)Kuriyama S, et al. Green tea consumption and mortality due to cardiovascular disease, cancer, and all causes in Japan: the Ohsaki study. JAMA 296:1255-1265. 2006年
   

プロフィール

東北大学大学院医学系研究科 教授 辻一郎(つじ・いちろう)

1983年東北大学医学部卒。専門は、生活習慣病・老化の疫学、健康寿命。厚生労働省が国民の健康増進の目標値を定めた「健康日本21」(第二次)の策定に携わる。

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

トレンドニュースby 朝日新聞デジタル

関連記事