「自測自健(じそくじけん)」のススメ

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会社の健康診断は義務!検査内容と注意事項について

   

監修者プロフィール

伊藤メディカルクリニック院長
伊藤 幹彦 先生

東京医科大学卒業後、東京医科大学第2外科(心臓血管外科)入局。東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科や東京警察病院外科医長などを経歴し、現在は伊藤メディカルクリニックの院長を務める。これまでの術者としての経験をもとに、全身管理の大切さをモットーとし、健康維持への貢献を目指している。

 経営者が果たすべき責任のひとつに、従業員の定期健康診断があげられます。長時間労働による健康への悪影響が問題になっている今日において、健康診断の重要性は増す一方です。従業員が心身ともに健全で活き活きと仕事ができる状態を維持することが、事業者の利益にもつながります。今回は、事業者が健康診断に関して確認すべきことを解説します。

健康診断は法律上の義務!

 労働者の安全と健康を守り快適な職場環境を実現するための法律として、労働安全基準法が知られています。どの会社でも行う定期健康診断は、この法律に則って実施されます。法律で明示された事業者・従業員双方の義務をあらためて確認しましょう。

事業者が守るべき義務
 事業者は、常時使用している労働者に対して健康診断を受けさせる義務があります。常時使用する労働者とは、期間の定めなく雇用している正社員や、1年以上働く予定もしくはすでに働いている契約社員、一定の基準を満たすパートやアルバイトなどのことです。

 健康診断を行うだけでなく、適切な事後措置をとることも義務の範囲に含まれます。医師からの意見を勘案したときに必要性を感じたら、就業場所の変更や時間短縮といった処置をとることも大切です。状況によっては、療養休暇など会社の制度を活用して、一定期間休ませる措置を講じることもあります。意見を聞く相手は、産業医が適当です。産業医がいない場合は地域の産業保健センターに相談し、アドバイスを求めます。

従業員が守るべき義務
 従業員には、事業者の指示に従って健康診断を受ける義務があります。ただし、会社の指定する医療機関を断ることは可能です。かかりつけの医療機関など好きなところで指定項目に関する検査を受け、会社に報告することで代用することができます。健康診断を受けなかったからといって罰則はありませんが、労働災害が起こったときに必要な補償を受けられないなど不利益を被る原因となりかねません。定期的な健康診断は自分を守るために必要なものと考え、指示されたとおりに受診しましょう。

会社が行うべき健康診断一覧

 会社が行うべき主な健康診断は、雇入時の健康診断・定期健康診断・特定業務従事者健康診断といったものです。それぞれの内容や実施時期に関する取り決めを見ておきましょう。

雇入時健康診断
 常時使用する労働者を雇用するときに行う健康診断のことをいいます。既往歴や業務歴の確認・自覚症状及び他覚症状の有無・胸部X線検査・肝機能など11項目をすべて含んだ検査でないと認められない決まりです。実施時期を明確に定める条文はないものの、速やかな対応が求められます。

定期健康診断
 定期健康診断は、常時使用する労働者に対して1年に1回以上の頻度で行います。雇入時健康診断とほぼ同じ内容をベースとしますが、医師の判断によっては一部省略可能です。省略できる項目例として、20歳以上の労働者の身長・胸部X線検査で病変が見られない人に対するかくたん検査などがあげられます。省略するには細かい規定がたくさんあるため、安易な判断は避けてください。

 常時50人以上の労働者を抱える事業者には「定期健康診断結果報告書」による所轄の労働基準監督署長に対する報告義務があることも注意したいポイントです。報告書には定期健康診断の結果だけをまとめればよく、雇入時の内容は対象からはずれます。報告義務がない事業者も、健康診断の記録は適切に保管しましょう。重要な個人情報として慎重に取り扱い、外部に漏えいすることがないよう安全管理を徹底します。

特定業務従事者健康診断
 労働衛生対策上、特に有害と判断される仕事を担当している労働者に対しては、配置替えがあったときおよび6ヶ月に1回の頻度で健康診断を行います。具体的には、放射線やX線にさらされる仕事・水銀などの有害物質を扱う仕事・ボイラー製造など、騒音がひどいところで行う仕事などが対象例です。

健康診断について知っておくべきこと

 定期健康診断の実施方法や費用負担など、事業者が知っておくべきことはたくさんあります。知識不足が原因で従業員に不利益を与えることがないように、基礎知識を見ておきましょう。

実施方法
 健康診断の実施方法にはいくつかの種類があります。スタンダードな方法は、健康診断実施機関が行う「巡回検診」を活用すること。受けた人・受けていない人を管理する手間がなく、事務作業がスムーズに進むメリットがあります。その反面、一時的に通常業務が手薄になることには注意しましょう。人数が多い場合は複数日程を設けるなど、事業者の工夫も求められます。

 各自で健康診断を受けさせて結果を提出する方法なら、通常業務に対する影響は限定的です。検査項目が不足すると健康診断を行ったことにならないため、注意喚起の資料を作成して配布するなどしっかりとした事前準備が求められます。各部署の管理職に対しては、業務の都合に合わせて部下の健康診断スケジュールを決めるなど、しかるべき配慮が必要です。オンシーズンが決まっている部署なら比較的余裕がある時期に部下の受診を促すなど、計画的に対応することで業務に対する影響は軽くなります。

健康診断の費用負担者
 健康診断にかかる費用は、会社の全額負担です。ただし、従業員の判断で追加検査を行った場合の差額分は会社の判断次第とされます。トラブルを防ぐためには、会社負担の上限をあらかじめ明示するとともに、超えた分は自己負担となることを説明しましょう。健康診断にかかる費用は医療機関によって異なりますが、1人あたり8,000円から1万円くらいが相場です。年度予算の中に健康診断費用を盛り込み、十分な予算を確保しましょう。

 また、健康診断は業務時間内に行うことが推奨されます。従業員が無理なく診断を受けられる環境を整えるためにも、受診している時間の賃金を支給しましょう。休日に健康診断を受けるように指定した場合、従業員から不満が出てくるリスクもあります。トラブルを防ぐためには、あらかじめ労使協議で定めておくのが安心です。お互いに納得した方法に従って運用すれば、健康診断のたびに不満が出て関係が悪化するリスクを予防できます。

実施すべき時期
 1年以内ごとに1回の原則を守っていれば、実施時期は自由です。従業員によって実施時期が異なっても問題はなく、誕生月に受診させるなど個々に案内を出す方法で運用できます。集団検診の場合は、医療機関が混み合う時期を避けてオフシーズンに合わせるといった選び方も可能です。そもそも健康管理が目的ですから、毎年の実施時期がバラバラになってしまうのは望ましいことではありません。一定周期で行うことができるように計画するのがよいでしょう。毎年の定例行事化することで受診率が高まり、従業員の健康意識も深まります。

 事業者に課される健康診断の義務と時間、賃金、費用などに関して紹介しました。労働者の働きやすい環境を提供することが働きがいにつながり、事業者に利益をもたらしてくれます。自社の健康診断計画を今一度見直し、安心して働ける環境作りが大切です。

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

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