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事業者として知っておきたい!健康診断の法定項目

   

監修者プロフィール

伊藤メディカルクリニック院長
伊藤 幹彦 先生

東京医科大学卒業後、東京医科大学第2外科(心臓血管外科)入局。東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科や東京警察病院外科医長などを経歴し、現在は伊藤メディカルクリニックの院長を務める。これまでの術者としての経験をもとに、全身管理の大切さをモットーとし、健康維持への貢献を目指している。

 法律で定められている健康診断は、法定検診と呼ばれています。法定検診は、法定項目を含む内容で実施することが定められているほか、事業者が費用を負担して法定検診を行うことが法律で義務づけられています。健康診断を適切に実施しなければ罰則を受けるリスクもあるため、正しい知識が不可欠です。今回はそんな健康診断の法定項目について紹介します。

法定項目に基づく健康診断

 どんな業種にもあてはまる法定検診には、雇入時の健康診断・定期健康診断の2種類があります。それぞれの位置づけと検査項目に関して詳細を見ておきましょう。

定期健康診断・雇入時の健康診断は義務
 事業者には、労働安全衛生法第66条に基づいて健康診断を行う義務があります。雇入時の健康診断は、常に使用する労働者を雇用する際に1回限り実施するものです。定期健康診断は、常時使用する労働者に対して、1年に1回以上の頻度で継続的に実施するものを指します。常時使用する労働者とは、正社員・1年以上雇用する予定の契約社員などのことです。派遣労働者の健康診断は派遣会社の担当ですから、事業者の対象からははずれます。あくまでも自社に所属している労働者を対象に行うものととらえましょう。

検査内容
 定期健康診断・雇入時の健康診断の内容は、法定項目として決まっています。以下11項目を満たすものでないと、健康診断を行ったことにはなりません。

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査

 雇入時の健康診断は、11項目のいずれも省略不可です。内定段階で自主的に検診を受け、結果を提出させる場合は、内容を明記した資料を配布しましょう。定期健康診断には、医師の判断によって省略可能と判断される場合、行わなくても構わない項目があります。ただし、年齢など機械的な分け方で省略可否を判断することはできません。検診を担当する医師とよく話し合い、慎重な判断が必要となります。

健康診断の対象者
 法定検診の義務がある「常時使用する労働者」のほか、正社員の週所定労働時間の2分の1以上4分の3未満で働くパートタイム労働者も対象に含めることが推奨されています。パートタイム労働者などを対象に法定外健康診断を導入する事業者が一定の条件を満たせば「キャリアアップ助成金 健康管理コース」という補助金の対象になることも。1事業所あたり1回限りの補助金ではあるものの、最大48万円(※中小企業・生産性の向上が認められる場合の金額)が支給されます。

重要な健康診断について

 労働安全衛生規則第13条第1項第2号に列挙された業務を担当する労働者に対しては、特殊健康診断が必要です。雇入れや配置替えのタイミングなど、6ヶ月に1度以上の頻度で行う決まりになっています。

特殊健康診断
 特殊健康診断が必要となるのは、高圧室内業務・放射線業務・特定化学物質業務・石綿業務・鉛業務・四アルキル鉛業務・有機溶剤業務に常時従事している労働者などです。一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、業務が変わっても定期的に健康診断を行う義務があります。特殊健康診断を行った結果次第では業務変更や作業時間短縮など、一定の措置が必要です。検査記録は5年もしくは30年の保存義務があるため、適切に管理しましょう。

 前述の業務を担当している労働者以外にも、行政指導による特殊健康診断が必要になるケースがあります。重い荷物を運ぶ労働者や介護業務者らに対する腰痛健康診断などが一例です。これらの健康診断は努力義務とされるケースも多く、健康保険組合から通達される内容に従います。

じん肺健診
 じん肺健診とは、じん肺法に基づき実施される健康診断のことをいいます。粉じん作業を常時担当する労働者を対象として、1年もしくは3年以内ごとに1回の頻度で検診を行ってください。じん肺健診を行うことで労働安全衛生法の健康診断の代用も可能です。じん肺検診の結果は、7年間の保管義務があります。医師の意見を勘案して作業の変更・配置転換が必要と判断されれば、必要な措置をとることも事業者の責任です。合併症にかかったことが認められれば、一定期間の療養を検討しましょう。

歯科医師による健診
 塩酸・硝酸・硫酸など有害なガスもしくは蒸気などを発散する場所で働く労働者に対しては、歯科医師による健診が必要です。検診内容には、口腔内のトラブル・健康状態に関する問診や下顎前歯・口腔粘膜の診査などが含まれます。口腔内の写真をとって前年度と比較、トラブルの進行を客観的に判断する検査も大切です。

その他の健康診断で知っておくべきこと

 健康診断に関して法定項目以外に知っておきたい内容をまとめました。時期や費用など基本的なルールをふまえて、従業員の安全衛生管理に役立てましょう。

実施する時期
 法律で規定している頻度を守れば、事業者が自由に選択できます。健康診断本来の目的をふまえれば、毎年決まった時期に行うのがおすすめです。会社の年中行事として定着させることにより、日常業務とのスケジュール調整もスムーズに進みます。実施時期を決めるにあたって、部署によって実施時期を分けるなど調整も可能です。年度末が忙しい経理部は決算シーズンをはずすなど、業務内容に配慮した計画を立てることで、従業員の負担を軽減できます。

受診費用の負担者について
 健康診断を受けさせる義務が事業者にある以上、会社負担が原則です。健康診断にかかる費用をあらかじめ予算として確保し、収支計算に含めましょう。健康診断中の賃金の扱いについては労使の協議に従いますが、円滑な運営のためにも労働時間内の健康診断実施をおすすめします。特殊健康診断の対象者については、業務遂行に不可欠なものですから賃金支給の対象です。労働時間内に検診機会を設けて、受診するように指示しましょう。

従業員が拒否した場合
 従業員には、事業者の指示に従って健康診断を受診する義務があります。拒否する労働者に対しては、就業規則に基づいた懲戒処分の適用も可能です。スムーズな受診を促すためにも、健康診断を受けることは「権利」ではなく「義務」であり、受診拒否は従業員自身の不利益につながることなどを前もって説明しましょう。業務の都合や個人的な用事で受診が難しいといったことにならないように、複数日程を設け、会社の指定する医療機関以外で受診しても構わないことを伝えるといった配慮も大切です。

 従業員が自分で選択した医療機関で検診を受けた場合には、ほかの従業員の費用相当額を補助しましょう。法定項目以外に追加の検査を行った費用まで事業者が負担する義務はありません。補助金額の上限や対象の検査内容をあらかじめ明示することで、従業員とのトラブルを予防できます。認識の不一致が原因で食い違いが生じることはないよう、十分な説明を行って従業員の理解を求めましょう。

 健康診断の法定項目と事業者の義務に関して紹介しました。従業員が安心して働ける環境を提供することは、事業者の重要な責任です。心身ともに健康で活き活きと仕事ができる環境を提供すべく、定期的な健康診断を実施しましょう。

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

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