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お風呂での血圧低下に要注意!対策と予防法

   

監修者プロフィール

伊藤メディカルクリニック院長
伊藤 幹彦 先生

東京医科大学卒業後、東京医科大学第2外科(心臓血管外科)入局。東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科や東京警察病院外科医長などを経歴し、現在は伊藤メディカルクリニックの院長を務める。これまでの術者としての経験をもとに、全身管理の大切さをモットーとし、健康維持への貢献を目指している。

 お風呂で立ちくらみになったことはありませんか? 実はその立ちくらみは、血圧低下によるものかもしれません。今回は、お風呂に入って血圧が低くなるメカニズムやその危険性、およびその回避方法を紹介します。

入浴する際に血圧が低くなるメカニズムとは

 入浴中、ヒートショックが原因で亡くなる人は年間1万人を大幅に超えると言われ、交通事故の死亡者よりも多いと言われています。入浴中に起きた心肺停止状態の発生状況は、気温が下がり寒くなる頃から増え始め1月が最も多くなっており、対策を呼びかける声が大きくなっています。

ヒートショックとは
 ぽかぽかと暖かいリビングから出てトイレや洗面所などに行くと、寒さに思わずブルっと震えてしまうこと、ありませんか? この家の中の寒暖差が、私たちに重大な健康被害をもたらすことがあります。

 ヒートショックは、こうした急激な気温の変化が原因となって起こる、循環器系の健康被害です。血圧の急激な変動が引き金となって、失神や心筋梗塞、脳梗塞などの命に関わる重大な症状を引き起こします。

 入浴時のヒートショックは高齢者だけに限ったものではありません。まだ若いから大丈夫と思っている人も、油断せずに対策を心がけましょう。

ヒートショックのリスクが高い人
 ヒートショックは誰にでも起こる可能性がありますが、特に影響を受けやすい人というのは、以下のリストに該当する人です。

・65歳以上
・高血圧、糖尿病などで動脈硬化の恐れが高い
・肥満
・不整脈や睡眠時無呼吸症候群がある
・一番風呂や熱いお風呂を好む
・飲食後に入浴する習慣がある
・30分以上お湯に浸かっている

 

 若い人でも上記に該当する人は、ヒートショックの対策を行ってください。

入浴により引き起こされる血圧低下
 ヒートショックによる重篤な症状が起きやすいのが、冬の入浴中です。浴室は日常生活の中でも最も血圧の乱高下が起きやすい場所なので、寒いと感じるようになったら、早めに対策を講じておくことが大切です。

 なぜ浴室でヒートショックが起こりやすいのでしょうか?

 そもそも、暖かい室内から寒い脱衣所に移動すると、それだけでも寒さで血管がギュッと縮まります。そこで衣服を脱ぐと、さらに体が冷えてますます血管が縮み、血圧が上昇します。そのまま移動した浴室内が冷えていると、血圧の上昇はさらに進みます。この状態で熱めのお湯に浸かると、一気に血管が広がり、血圧が急低下してしまう可能性が高まるのです。

 

血圧低下によって起こるさまざまな症状とは

 血液を全身に循環させる圧力である血圧が低下すると、顔面蒼白や不整脈、嘔吐などいろいろな症状が起こってきます。めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、失神のような意識障害など、浴室で起こると重大な事故につながる症状もあります。

 以下で、入浴中の血圧低下による症状やその原因について、詳しく見てみましょう。

めまい
 血圧が低下したときに最初に見られる症状が、めまいや立ちくらみです。心臓から全身のすみずみに向けて血液を送るために必要な血圧が、一定以上に低くなりすぎると血流が低下してしまい、各器官に必要な量の血液を送れなくなってしまいます。

 人間の体は多少の血圧低下では脳への血流量が減らない仕組みになっていますが、あまりにも血圧が低くなりすぎると、脳へ届く血液の量が減って酸欠状態になります。そのため平衡中枢の働きが悪くなり、フラフラとしためまいが起こってしまうのです。

 血圧の急激な低下は、失神にもつながることがあり、入浴中であれば溺死の危険性もあるので、注意が必要です。

立ちくらみ
 立ちくらみは脳への血流量が一時的に減少するために瞬間的に起こるめまいで、起立性低血圧などが良く知られています。立ちくらみが起きやすい場面としては、朝の起床時に布団から起き上がったときや、イスなどから急に立ち上がったとき、食後や入浴時が挙げられています。

 

 熱いお湯に入る、あるいは長湯でゆっくりと浴槽に浸かっていたあと、急に立ち上がろうとしたときに、立ちくらみが起こることがあります。これは温度差で血圧が下がるうえに、長湯や高温のお湯で脱水が進むことで、さらに血圧が下がるからです。

 くらくらするだけなら良いのですが、特に高齢者などはそのまま転倒につながることもあり、危険な状態となります。

動悸、息切れ
 動悸や息切れも、血圧低下によって起こる症状のひとつです。一時的なものであれば慌てる必要はなく、安静にしていれば、じきに落ち着いてきます。

 

 ただし高齢者の動悸や息切れは、心臓に大きな負担がかかっていることで起きる場合もあります。他にも危険な症状がないか顧みて、不安な場合は受診も考えましょう。

ヒートショックを回避する方法

 ヒートショックを回避するには、急激な温度差を避けることが最も重要です。

 浴室はもちろん、寒いトイレや冷え切った部屋への出入り、上着を着ずに外に出てまた暖かい部屋に入るなど、少しの時間だからといっても危険を伴います。特に寒い・暖かいが急激に変わる入浴時には、リスクが潜んでいます。

 毎日の習慣だけに、対策は必ず行うようにしてください。

長時間の入浴は避ける
 ヒートショックを防ぐために注意したいのが、入浴の際のお湯の温度と時間です。

 

 熱すぎるお湯や長時間の入浴は、心臓に負担がかかるうえ、血圧の乱高下、脱水などにつながります。個人差はありますが、お湯の温度は41℃以下に設定し、10分以上は入らないようにしましょう。

 浴槽に入る前にはかけ湯をして、お湯の温度に徐々に体を慣らすことも、急激に血圧が変動するのを防ぐために有効です。心臓に遠い手や足から少しずつお湯をかけ、これから入浴するということを体に認識させましょう。

 また最初は38℃から40℃程度のぬるめのお湯にしておき、熱いお湯を足して温めながら入るのも良い方法です。

 お湯に入るときは首まで浸かるのではなく、胸のあたりまでにしましょう。

湯冷めしないように気を付ける
 入浴後に湯冷めしないように注意することも大切です。

 急激に体が冷えてしまったことが原因でヒートショックになり、入浴から数時間後に死亡したという事例も報告されています。こうしたことを防ぐには、浴室内で体の水分をある程度拭き取ってから、バスタオルで体を覆って浴室から出ると良いでしょう。浴室内は蒸気で温まっているので、脱衣室との急激な寒暖差から身を守ることができます。

浴室を温めておく
 ヒートショックを防ぐためには、暖かい部屋から脱衣室に移動するとき、温度差を5℃以内にすることが望ましいとされています。脱衣室や浴室に暖房機能がある場合は活用し、無い場合は暖房器具を置くなどして温めておきましょう。

 また浴室内の温度を上げるには、シャワーでお湯はりをして蒸気を上げる、入浴前にはお湯をはった浴槽のフタを外しておく、という方法も効果があります。
また床が冷たくヒヤッとする場合は、浴室マットやスノコなどを敷くのも効果的です。

ヒートショック予報を活用する
 日本気象協会では、「ヒートショック予報」をネット上で公開しています。

 

 これは標準的な戸建て住宅を想定し、気象予測情報にもとづいて屋内でのヒートショックのリスクの目安を3つの区分で表示するものです。5つのアイコンでわかりやすく表示され、リスクが一番低いものが「油断禁物」、その上が「注意」となり、一番上の「警戒」は、さらに警戒・気温差警戒・冷え込み警戒の3つのアイコンに分かれています。

 

 もちろん住宅の構造や暖房設備、体調などによってリスクは異なりますが、これらを上手に目安として利用し、警戒の日はしっかりと浴室周辺を温めて温度差を少なくするなど、ヒートショックの危険から家族を守るために参考にしてみてください。

   

 冬はヒートショックが増える季節です。ヒートショックが起こるメカニズムを理解して、しっかり対策を行っていきましょう。

 

 浴槽の深さにも関係あるかもしれませんが、首まですっぽりと湯船に浸かってしまうと水圧が体に負担をかけて血圧を上げてしまったり、出るときにその圧が取れて一気に血圧が下がってしまうということもあるようです。

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

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