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健康診断のバリウム検査は拒否できる?

監修者プロフィール

伊藤メディカルクリニック院長
伊藤 幹彦 先生

東京医科大学卒業後、東京医科大学第2外科(心臓血管外科)入局。東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科や東京警察病院外科医長などを経歴し、現在は伊藤メディカルクリニックの院長を務める。これまでの術者としての経験をもとに、全身管理の大切さをモットーとし、健康維持への貢献を目指している。

 健康診断で必要となってくることが多いバリウム検査。バリウムが口に合わなかったり、気分が悪くなったりするなど、苦手な方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、バリウム検査を拒否できるのかなど、また実際のバリウム検査で役に立つ情報を紹介します。

健康診断のバリウム検査はなぜ必要なのか

 健康診断でバリウム検査を受ける第一の目的は、胃がんの早期発見です。胃がんは早い段階で発見することができれば、ほぼ完治できますし、治療も比較的容易な方法で受けられます。また胃がんだけではなく、胃潰瘍やポリープ、十二指腸潰瘍や胃炎などを発見することもできます。

バリウムを飲む検査は胃部X線検査
 バリウムを飲む検査は「消化管造影検査」と言い、食道、胃、十二指腸の胃部をX線検査(レントゲン撮影)して、病変がないかをチェックします。

 バリウムはX線を透過しません。この特性を利用して、胃部の粘膜にバリウムを付着させ、粘膜の凹凸の状態を見ます。バリウム検査では、胃をふくらませるための発泡剤(炭酸ガス)と、造影剤であるバリウムを飲み、胃をふくらませることで内部を観察できるようになります。これにより、小さな病変も発見しやすくなります。

 ふくらんだ胃壁にバリウムを付着させるために、撮影用の台の上で体を仰向けやうつ伏せにしたり、上下を変えたり、左右に回転させる必要があります。検査技師から指示があるので、それに従って体を動かしましょう。バリウムはいったん付着してもまた剥がれてしまうので、何度もこれらの動きをしながら撮影していきます。

バリウム以外の胃部X線検査方法
 胃部X線検査では検査前にバリウムを飲みますが、このバリウムは造影剤というもので、画像診断をするために胃部の粘膜の写り方にコントラストをつけて、病変を見つけやすくするためのものです。

 

 バリウムはX線検査には欠かせないものですが、不溶性のため、検査が終わったあとの排出に苦労が伴います。胃腸穿孔で胃壁や腸壁に穴が空いている人や、消化管閉塞の恐れがある場合には、バリウムを使用することができません。

 その場合は水溶性で高浸透圧性のガストログラフィンなどのヨード造影剤を使用して、検査を行うことがあります。ヨード造影剤はその性質から、消化管の外に漏れても自然に吸収されるので、穿孔や閉塞のある人でも使うことができます。

法定の健康診断の範囲に胃部X線検査は含まれているか
 労働安全衛生法では労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的に、定期健康診断(法定健診)を義務付けています。この法定健診の検査項目は以下の通りです。

1. 問診(既往歴、業務歴、喫煙歴、服薬歴、自覚症状及び他覚症状の有無の検査)
2. 身長、体重、腹囲、視力、聴力、の検査
3. 血圧の測定
4. 胸部X線検査(必要に応じ喀痰検査も実施)
5. 尿検査(尿中の糖及び蚤白の有無の検査)

 これに胃部X線検査は含まれていませんので、法律で義務付けられている検査ではありません。ですが、例えば健康保険組合によっては一般健診として胃部レントゲン検査がセットとなっているものもあります。

 

バリウム検査を拒否した場合にどうなる?

 バリウム検査がどうしても苦手という方は、それが理由で健康診断が近づくと気が重いということもあるでしょう。

 上でも触れたように、胃部のX線検査は義務ではありませんので、拒否しても罰則があるわけではありません。しかし会社から受けるように指示が出ている場合、勝手に検査項目を変えたり断ったりするのは問題があります。

 ただし、バリウムにアレルギーがある人や、以前にバリウムを服用して体調が悪くなるなどして検査が受けられなかった人。検査後にバリウムがうまく排出できず、医療機関を受診したことがある人などはその限りではありません。

会社とのトラブルはあるか
 バリウム検査を拒否した場合、会社とのトラブルになるかどうかは、その会社の考え方や就業規則などにもよります。中には解雇通告をされたという、極端な例まであるようです。

 しかし何らかの正当な理由があって受けないということに対しては、会社もそれなりの理解を示してくれるでしょう。トラブルを避けるには、勝手に検査を拒否する、また当日にキャンセルするのではなく、事前に上司や担当部署に相談をしておくと良いと思います。

 ただ受けたくないから、嫌いだからということでは無理かもしれませんが、体質的な理由でバリウムが飲めないということであれば、会社も無理に受けろとは言えません。

 ただし胃部X線検査を受けないことでセット料金が適用にならず、検査費用が割高になったり割引が適用されなかったりする場合があり、その場合自費負担を求められることはあるかもしれません。

胃カメラで代用可能
 「社員の健康を守るため」という会社の方針によってどうしても胃の検査を受けなければならないという場合は、胃カメラによる胃内視鏡検査を受けるという方法があります。

 胃がん検診はバリウム検査だけでなく、胃カメラによってより精密な検査をすることが可能です。一般的には自分で胃カメラの検査を受けて、その結果を会社に提出すればバリウム検査の代わりとすることができます。

 また会社の法定健診の際に、バリウム検査を胃カメラに変更するという方法もあります。会社によって規定があるので、必ず前もって聞いておくことが肝心です。

 費用に関しても不足分を自己負担とする、あるいは胃カメラにかかる検査費用一切を個人負担とする場合が多いので、その点も忘れずに確認しておきましょう。

バリウム検査前の注射は拒否することができる
 バリウム検査の前に多くの検査施設では筋肉注射をしますが、この注射は「鎮痙剤(ちんけいざい)」というもので、消化管のぜんどう運動を止めるために打ちます。

 この薬剤の働きによって胃の動きが抑えられ、バリウムがすぐに流れ出てしまうのを防いだり、きれいに写真を撮影できたりすることが可能になるのです。

 薬剤には「ブスコパン」という薬剤を使用することが多いのですが、ブスコパンが打てない人には「グルカゴン」を使います。どちらの薬剤にも副作用の可能性はあり、注射を拒否することができます。

 特にブスコパンには悪心や嘔吐の他に頭痛やめまい、眼の調節障害(ピントが合わなくなる)や散瞳(過度に瞳孔が開いてしまう)などの副作用が出やすく、数時間で自然に治るとはいえ、検査後の仕事に支障をきたしてしまうことも少なくありません。

 鎮痙剤の注射は行っていない施設もあるくらいですから、不安な人は受けなくても特に問題ないでしょう。

バリウム検査を受ける場合の対策いろいろご紹介

 バリウム検査を受けるのは気が重い理由として、検査にかかる時間以上に検査前や検査後の負担が大きいからということもあるのではないでしょうか。

 実際にバリウム検査は苦手という人が大半かと思われますが、少しでもラクな気持ちで検査を受けられるように、対策をご紹介します。

検査前
 検査前の難関が発泡剤とバリウムを飲むことです。これが辛いという方は多いことでしょう。

 まず発泡剤ですが、飲み方にコツがあり、舌の前方ではなくできるだけ奥の方に置いて、すぐに飲み込むことです。少ない量の薄めたバリウムか、液体の消泡剤を全量飲まなければならないので、これしか方法がありません。発泡剤は水分と混ざるとすぐに発泡を始めるので、飲み方を間違えると口の中が泡だらけになって吐いてしまう可能性があります。

 次にバリウムですが、粘度が高くドロドロとしていて味もまずいので、少しずつゆっくり飲んでいるとだんだん飲めなくなってきます。コツはカップの中を見ないよう視線を上にして、ゴクゴクと一気に飲んでしまうことです。一気に飲んでしまえば味もよくわからず、カップの中身を見て嫌気が差す暇もありません。

検査中
 バリウムを飲み終わると、間髪入れずに検査台の上で右に左に逆さまにと、いろいろと動かなければなりません。両手で横の手すりを握り締めながら、台から転がり落ちないように頑張ってあちらこちらへと動かなければならないため、どちらが右でどちらが左かわからなくなってしまうほどです。焦らずに検査技師の指示に従って、落ち着いて動くようにしましょう。

 また発泡剤を飲んでからこの検査が終了するまで、ずっとゲップを我慢するのも非常に大変です。

 ゲップを我慢するコツは3つあります。

①アゴを引き気味にして顔を若干下向きにする
②ゲップがこみ上げてきたら出る直前に唾液を飲み込む
③できるだけゆっくりと鼻で呼吸をする

の3つです。これだけでも、かなり我慢できるようになります。

検査後
 検査後に最も重要なことは、とにかく少しでも早くバリウムを排出することです。

 バリウムは長く胃や腸にとどまっていると、固まって排便で出すことが難しくなります。検査直後に渡される下剤を、500ml以上の大量の水で飲みましょう。便意を催したら我慢せず、すぐにトイレへ行くことです。下剤は3~4時間で効いてくると思いますが、その後も水やお茶を飲んで水分を多めに取りましょう。特に普段あまり水を飲まないという人は、意識して継続的な水分摂取を心がけてください。

 アルコールにはバリウムを固めてしまう特性があるため、バリウムが完全に排出されるまで飲むのは禁止です。最初は真っ白の便が、普通の色に戻ったら排出完了ですが、普通は2日間くらいかかります。

 ここまで済んで、バリウム検査は終了です。

   

 健康診断でのバリウム検査は拒否することはできますが、胃がんの早期発見などに有用であるため、会社の集団健康診断では受診したほうが無難かもしれません。もしどうしてもバリウムが苦手ということであれば、胃カメラでの検査などを検討してみてはいかがでしょうか?

自測自健とは

自分の体の状態を自分で測る。健康を保つための新習慣を考える

健康状態を知るためには、血圧や体重、体脂肪率など、さまざまなデータを測ること。
しかも、人間ドックや健康診断の時ではなく、毎日「自分で測る」ことが大切です。

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